こんにちは。家咲の古田です。
住宅ローンを組んだとき、「早く返した方が得」と感じる気持ちは自然なことです。ただ実際に相談の場で話を聞いていると、繰り上げ返済を急いだことで、後々の出費に対応できなくなったというケースも少なくありません。
この記事では、繰り上げ返済の実際の効果を確認しながら、教育資金・老後資金・手元の備えといったライフプラン全体の視点から、資金をどう考えるべきかを整理していきます。

この記事でお伝えすること
・繰り上げ返済が必ずしも正解でない理由
・手元に資金を残すべき現代ならではの背景
・教育資金・老後資金とのバランスの取り方
・住宅ローン控除との関係と2026年時点の注意点
・繰り上げ返済が有効に働く具体的な条件
4,500万円・0.9%・35年のローン、「早く返す」と総額はどう変わるか
モデルケースで数字を整理する
今回の試算条件:建築費4,500万円・金利0.9%・返済期間35年(元利均等返済)の場合、月々の返済額はおよそ12万4,000円。35年間の総返済額は約5,200万円となり、支払う利息の総額はおよそ700万円です。
「700万円も利息を払うなら早く返したい」という気持ちは理解できます。たとえば、返済開始から5年後に200万円を一括で繰り上げ返済(返済期間短縮型)すると、利息の節約効果はおよそ60〜80万円程度が目安となります。
ここで一つ確認してほしいことがあります。その200万円、今手放せる余裕がありますか。
なお、2026年3月現在、変動金利は上昇傾向にあり、金融機関によっては1%前後を超える水準も見られます。今回の0.9%は試算条件として設定した参考値ですので、実際の借入時の金利条件で改めてご確認ください。

繰り上げ返済の翌年、急な出費が重なったら家計はどうなるか
「まさか」の出費は予告なく重なる
住宅ローンの返済期間は30〜35年。その間、家族の暮らしは一定ではありません。
子どもが中学生になった年に塾代が月3〜4万円かかりはじめ、同じタイミングで車の買替えが重なり、さらに給湯器が突然故障して20万円の出費が走る。こうした「重なり」は、決して珍しいことではありません。
このとき手元の貯蓄が薄ければ、カードローンに頼らざるを得ない場面も起こりえます。住宅ローンの金利が0.9%であるのに対し、大手カードローンの金利は年13〜18%程度。繰り上げ返済で節約した60万円より、緊急借り入れによるコストが上回るケースも現実にあります。

生活防衛資金の目安は「月の生活費の3〜6ヶ月分」
会社員・共働き世帯の場合、手元に残すべき生活防衛資金の目安は、月の生活費の3〜6ヶ月分とされています。月の支出が30万円であれば、90〜180万円は手元に確保しておくことが望ましい水準です。これは「使うためのお金」ではなく「備えのためのお金」です。
繰り上げ返済を検討する前に、まずこの水準を確認することが順序として大切です。

繰り上げ返済の前に確認したい「住宅ローン控除」との関係
2026年の税制改正により、住宅ローン控除は2030年12月31日まで延長されています。控除率は年末ローン残高の0.7%で、残高3,000万円の年であれば21万円が税額から引かれる計算です。
ここで注意が必要なのは、繰り上げ返済によって返済期間が10年未満になると、その年以降は控除が適用されなくなるという点です。控除の適用期間中に大幅な繰り上げ返済を行う場合は、節約できる利息と失う控除額を比べてから判断することをお勧めします。

子どもの進学費用とローン返済が「重なる年」を今から確認しておくべき理由
教育費のピークは予測できます

教育資金は、ある程度見通しを立てられる支出です。文部科学省の令和5年度「子どもの学習費調査」(2026年1月公表)をもとにした、公立中心の年間教育費の目安は以下の通りです。
| 学校段階 | 年間教育費の目安(公立中心) |
| 小学校(6年間) | 約35万円/年 |
| 中学校(3年間) | 約53万円/年 |
| 高校(3年間) | 約51万円/年 ※注 |
| 大学(4年間・私立) | 約135万円/年 |
※2026年度より高校授業料支援の所得制限が撤廃され、授業料部分の家庭負担は軽減される見込みです。ただし教材費・修学旅行費等の授業料以外の費用は引き続き発生します。
大学進学のタイミングでは、入学金・前期授業料・一人暮らしの初期費用などが重なり、一年間で200万円以上の現金が必要になることも珍しくありません。
「そのとき貯めればいい」という考えは、住宅ローン返済中の家計では対応が難しいケースがあります。繰り上げ返済に充てようとしていたお金が、実はお子さんの進学準備資金として必要だったと気づくのは避けたいところです。
「ローン完済後に始めよう」では遅い、老後資金づくりの本当の開始時期

時間が資産形成の最大の武器
35年ローンを完済するのは、30代で借り入れた場合で60代後半。退職後の生活を支えるお金は、時間をかけて少しずつ積み上げることで効果が出ます。30代から月々1〜2万円をNISAやiDeCoで積み立てる場合と、50代から一気に積み上げようとする場合では、同じ金額を用意しようとしても長期的な結果に差が生じます。
NISAでは運用益が非課税となり、iDeCoでは掛け金が所得控除の対象になります。住宅ローンの繰り上げ返済で節約できる「確定した利息削減効果」と、長期運用による「期待リターン」のどちらが家計にとって有利かは、家族の状況によって異なります。いずれにせよ、「選択肢を持つこと」が重要です。
繰り上げ返済を「安心して実行できる」3つの条件

繰り上げ返済が有効に働くのは、以下の3つが揃ったときです。
・月の生活費の3〜6ヶ月分の生活防衛資金が確保されている
・子どもの教育費のピーク期が当面なく、資金に余裕がある
・住宅ローン控除の適用期間・控除額を確認したうえで判断できている
逆に言えば、一つでも該当しない状況では、急いで実行する必要はありません。
【まとめ】ライフプラン全体で資金計画を考えると見えてくる3つのこと
繰り上げ返済には利息を減らす効果がある一方、手元資金・教育資金・老後資金・住宅ローン控除とのバランスを無視して実行すると、家計全体の安定が損なわれる場合があります。2026年は変動金利が上昇傾向にある時代だからこそ、「急いで返す」より「備えを整えながら判断する」という視点が、長期的な暮らしの安心につながります。
・生活防衛資金(月の生活費の3〜6ヶ月分)を先に確保することで、緊急時の高金利借り入れを回避できる
・教育費のピーク時期を前もって把握することで、進学資金と繰り上げ返済のぶつかりを防ぐことができる
・住宅ローン控除の適用状況を確認したうえで実行することで、制度の恩恵を最大限に活かせる
「早く返す」ことが目的ではなく、「家族が安心して暮らし続けられる状態を保つ」ことが資金計画の本質です。資金計画について整理したい場合は、個別相談や資金セミナーをご活用ください。お気軽にお問い合わせください。

家咲の施工エリアについて
家咲では、山口市を中心に、防府市、宇部市、美祢市、萩市などを主な施工エリアとしており、事務所から車で1時間圏内を商圏としております。距離が近いからこそ、建てた後も気軽に声をかけていただける関係性を大切にしています。資金の話から家づくりの話まで、同じ場所で整理できる体制を整えています。「建てて終わり」ではなく、住まいとともに家族の歩みを長く見守るパートナーでありたいと考えています。
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本記事内のシミュレーションについて
本記事内のシミュレーションや数値は、あくまで参考としてお示しした目安です。実際の返済額・利息額・控除内容は、ご利用の金融機関や契約内容・審査結果によって異なります。また、税制や補助金制度は変更されることがあります。資金計画の最終判断は、担当の金融機関またはファイナンシャルプランナー等の専門家へのご相談をお勧めします。