こんにちは。山口市を中心に家づくりをお手伝いしている、家咲の古田です。
2025年度の住宅ローン貸出動向調査によると、50年返済を取り扱う金融機関が変動型でおよそ57%に達したというデータが公表されました。わずか1年で20ポイント以上の急増です。
「月々の負担が減るなら気になる」「でも総支払額が増えるのはやっぱり損?」——そんな疑問をご相談の中でよくいただきます。答えは一つではなく、ご家族の状況によって変わります。
この記事では、35年と50年を具体的な数字で比べながら、どちらが自分たちのライフプランに合っているかを整理するポイントをお伝えします。

この記事でお伝えしたいこと
・50年ローンが急増している背景と理由
・35年と50年、月々・総額を数字で比べられる
・メリット・デメリットが落ち着いて整理できる
・団体信用生命保険の役割と注意点がわかる
・繰り上げ返済と住宅ローン控除の正しい関係を知れる
住宅ローンの「50年」がいまや主流に——2026年、選択肢はどう変わったか
住宅金融支援機構が2025年度に実施した「住宅ローン貸出動向調査」によると、最長返済期間として「50年」を設定している金融機関の割合が、変動型で57.5%(前年度33.8%)、固定期間選択型で55.2%(前年度33.6%)と、わずか1年でおよそ20ポイント以上増加しました。
なぜこれほど急速に広がっているのか。背景には、住宅価格の継続的な上昇があります。
土地代や建築費が全国的に高まり、以前と同じ住まいを建てようとすると、より多くの資金が必要になっています。月々の返済額を現実的な家計に合わせるために、返済期間を長くするという選択肢が注目を集めているのです。
「50年も返し続けるなんて…」という印象を持つ方もいるかもしれません。ただ、50年ローンは「50年かけて少しずつ返す義務」ではなく、「月々の上限を抑えながら、余裕ができれば早く返せる枠組み」として活用するものです。この違いを押さえておくことが、正しい理解の出発点になります。

4,500万円を借りると、月々と総額はいくら変わる? 数字で整理する
まず数字で全体像を把握することが大切です。
ここでは、「総額4,500万円を金利1.0%で借りた場合」のシミュレーションをお伝えします(元利均等返済)。
| 返済期間 | 月々の返済額 | 総支払額 | うち利息 |
| 35年返済 | 約127,000円 | 約5,334万円 | 約834万円 |
| 50年返済 | 約95,300円 | 約5,718万円 | 約1,218万円 |
| 差額 | 約31,700円少ない | 約384万円多い | 約384万円多い |
50年ローンを選ぶと、月々の支払いは「約3.2万円少なく」なります。一方、総支払額は「約384万円多く」なります。「384万円も余計に払うのは損ではないか」——そう感じるのは当然のことです。
ただ、この月々3.2万円の差が、子どもの教育費のピーク・家電の買い替え・急な出費が重なる時期の「余白」になることも確かです。数字は同じでも、家族の状況によって、その意味は変わります。どちらが正解かは、数字だけでは答えが出ない。それが住宅ローン選びの本質です。

月々3万円の余裕は何を生む? 50年ローンが支持される3つの理由
① 家計にゆとりをつくり、生活の安定に貢献する
最も直接的なメリットは、毎月の返済額が約3.2万円少なくなることです。育児・教育費・日々の支出が重なる時期、この差額が家計の安定に大きく貢献します。将来の収入増加や余剰資金が生まれたタイミングで繰り上げ返済をする、という柔軟な計画と組み合わせることで、より使いやすいローンになります。

② 団体信用生命保険(団信)の保障期間が長くなる
住宅ローンには、多くの場合「団体信用生命保険(団信)」が付いています。
万が一ローン返済中に本人が亡くなったり、高度障害状態になった場合に、残りのローン残高が保険で補われる仕組みです。基本的な機能は35年でも50年でも同じですが、注意点があります。多くの金融機関では、完済時年齢の上限(75〜80歳前後)が設けられており、50年ローンを組む際には、ご自身の年齢とあわせて加入条件を事前に確認しておくことが大切です。
③ 余裕のある期間は抑え、繰り上げ返済で期間を縮めていける
50年ローンは「長期の枠」を活かしつつ、余裕があるときに繰り上げ返済で実質的な返済期間を短縮することができます。ボーナスや収入増加のタイミングで返済を上乗せすれば、総支払額の差を縮めることも可能です。最初から35年で組んで月々の支払いに追われるよりも、50年の枠を持ちながら柔軟に対応するほうが、生活にゆとりをつくりやすいというケースも少なくありません。
それでも総支払額は約384万円増える——50年ローンの3つのリスク
① 総支払額が大きく増える
試算の通り、同じ4,500万円を借りた場合、50年ローンでは35年ローンに比べて約384万円多く支払うことになります。長期の資産計画を考えるうえで、この差額は無視できません。「毎月の余裕」と「長期の負担増」を天秤にかけ、ご家族で丁寧に話し合っておくことが必要です。
② 完済時の年齢が高くなり、老後設計に影響する
30歳で50年ローンを組んだ場合、完済時の年齢は80歳になります。35年ローンであれば65歳です。
定年退職後もローン返済が続く可能性があり、老後の生活設計に直接影響します。繰り上げ返済を前提としても、「計画通りに進まないリスク」は常に念頭に置いておく必要があります。
③ 50年住み続けられる家かどうかも問われる
50年ローンを組むということは、「50年以上その家に住み続ける」という前提に近くなります。
建物の構造・断熱・気密性能が高く、適切なメンテナンスを継続できるかどうかが、長期にわたって暮らしの質を保つ鍵になります。返済期間と建物の耐久性を合わせて考えることが、見落とされがちな重要なポイントです。

繰り上げ返済を急ぐ前に——住宅ローン控除との正しい付き合い方
「50年ローンを組んで、早めに繰り上げ返済をしよう」という考え方は合理的に見えますが、一点、整理しておきたいことがあります。それが「住宅ローン控除との兼ね合い」です。
住宅ローン控除は、年末のローン残高の0.7%が最長13年間にわたって所得税・住民税から差し引かれる制度です(2026年以降も継続)。控除を最大限に活用するためには残高が高い状態を維持することが有利に働くため、控除期間中の積極的な繰り上げ返済は、受け取れる控除額を引き下げる結果になります。
なお、国税庁の公式見解(質疑応答事例「繰上返済等をした場合の償還期間」)によれば、当初の借入契約が10年以上であれば、繰り上げ返済で残存期間が短縮されても、控除は原則として継続されます。以前は「10年未満になると対象外」と説明されることもありましたが、当初契約の期間が要件の基準となる点は確認しておいてください。
控除期間中は残高を維持したほうが有利なケースが多く、繰り上げ返済は控除が終わる入居から13年経過後に実施するケースが合理的とされています。金利1%・控除0.7%の環境では、実質的な金利負担は0.3%水準に抑えられるため、控除期間中に無理に残高を減らす必要はないと考えられます。個々の状況によって異なるため、詳細は金融機関や税理士にご確認ください。

「35年か50年か」に正解はない——自分たちの判断軸をどう持つか
35年と50年のどちらが「正解」か、という問いに対する答えは一つではありません。
ご家族の状況や、これからの暮らし方によって変わります。
判断の糸口として、以下の点を整理してみてください。
・「今の月々の返済可能額」:生活費を除いた手取りの中で、35年返済をカバーできるか
・「将来の収入・支出の変化」:育休・転職・教育費のピークなど、資金が必要な時期はいつか
・「繰り上げ返済の現実性」:将来的に余裕資金ができる見込みはあるか
・「完済時の年齢と老後設計」:退職後にローンが残っていても、生活に支障がないか
「月々3万円の余裕があれば、子どもの習い事や予備費に充てられる」と感じるなら、50年という枠を活かしながら、余裕ができたら繰り上げ返済で期間を縮めていく選択も、合理的な考え方です。一方、「早く完済して老後の安心を確保したい」という方には、35年が向いているかもしれません。
「損か得か」という視点だけでなく、「今の家族に合っているか」で選ぶことが、後悔のない住宅ローン選びの基本です。ご家族の状況をしっかり整理したうえで、信頼できる相談の場で確認することをお勧めします。

【まとめ】35年と50年、後悔しない選択を支える3つの視点
総額4,500万円・金利1%の試算では、50年ローンは月々約3.2万円少なくなりますが、総支払額は約384万円多くなります。「どちらが損か得か」ではなく、今のご家族のライフプランに合った選択をすることが、住宅ローン選びの本質です。
・月々の余裕を確保しながら、繰り上げ返済で返済期間を短縮できるため
・団信の保障が長期間続く一方、完済時年齢の上限は金融機関ごとに要確認のため
・住宅ローン控除の期間を意識した繰り上げ返済計画が、総負担を抑えやすくするため
数字だけで決めず、ご家族の現状と将来の見通しを丁寧に整理したうえで、判断の軸を持っていただきたいと思います。
住宅ローンの選択は、建てる前の一時的な判断ではなく、その後の長い生活に影響し続けるものです。だからこそ家咲では、資金計画の段階から丁寧にお話を伺い、ご家族の状況に合ったご提案をしています。返済期間の選び方から始まる家づくりのご相談は、個別相談・資金計画相談の場をご活用ください。

家咲の施工エリア・ご相談について
家咲では、山口市を中心に、防府市、宇部市、美祢市、萩市 等を主な施工エリアとしております。事務所から車で1時間圏内を主な商圏としており、エリアを絞ることでご相談から引き渡し・アフターメンテナンスまで迅速にお伺いできる体制を整えています。「建てて終わり」ではなく、住まいの成長を見守り続けられる地域密着のパートナーでありたいと考えています。
<上記エリア以外につきましては、弊社担当までご確認ください>
出典情報
・住宅金融支援機構「2025年度 住宅ローン貸出動向調査結果」(2026年3月公表) https://www.jhf.go.jp/files/topics/4957_ext_99_2.pdf
・国土交通省「住宅ローン減税等の住宅取得等促進策に係る所要の措置(2026年度税制改正)」 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001975750.pdf
・国税庁「質疑応答事例:繰上返済等をした場合の償還期間」 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/06/10.htm